うたのある生活

村上

さくら木に 世をばゆづりて 梅の花 なくうぐひすと 楽隠居せむ

極楽に ずっと前から いきたいと 祈っているよ にんげんだもの

集まった 龍の七玉 学校の 友だちのため 海でつかうよ

このおもひ 言葉にせむと ろくすっぽ 考えもせず 羅列しつるよ

初歌を 作ったときは 眠れずに ミューズだけれど クールな彼女

おびえてた 小さなほたる つかまえて いきて帰れと 天にはなった

よみかけて 人の笑はば しあわせに 楽ではないが ずるく生きむよ

自由の身 ゆるされるなら 生まれあひ しあわせまでの 近き守りに



おもしろき こともなき世を おもしろく 駆け抜けてゆけ その両足で

伊藤翁 思ひ出されて 泣かれけむ 駆け抜けた日は 青春そのもの

散り果てぬ 旧体制の もののふに 灯明あげよ 荒城の月

青空に 蝉の鳴かない 夏休み 裁きの使徒よ 降りてこないで

みどり髪 乱してうたう あのひとは 私と歌を ともにする人

亡き人を 取り戻したい 一心で 幼き子らの 禁忌にふれぬ

泣かぬには 仔細のあろう ほととぎす 悲しく笑う わけをきかせて

世の中は 何か常なる マスメディア 昨日の不義ぞ 今日は是になる

この世をば わが世とぞ思ふ 人間の ひしめきあへる 狭き星かな

大臣の 物語する 物ごしに つらづゑつきて 暑きにとおぼす

さかしらに 己が不幸を 見せつけて 女同士の 争ひ止めつ

こんな血は ここで絶やして しまおうね あなたは私と ここで死ぬの



ほしいとき ほしい形は きてくれず 隙間をうめよ 浮世テトリス

配られた カードで勝負 はじめても 勝てる確率 ゼロではないさ

日に焼けた ドラゴンフライ つかまえた あの子の腰に 籠はなかった

公園の ハトにも顔の 違いあり 弱きをつつく いじめっこあり

亡き祖父は 七十路にても 若き日の 戦の夢に うなされにけり

あてのない この人生に 一度だけ 夢をみました いい夢でした

終末を 知っていながら 若き蛾は 立つ火柱に 乞はれて踊る

さまざまな 終末思想 とびかって 親切なひと 我に布教す

ふるさとを 見失ひて しまひけむ 転勤族は 西へ東へ



ひめられし 歌はうたかた 聞く人の 心にのみぞ 消えず残らむ

うたかたの 歌詠みびとは 消えぬれど などて心に 跡残しけむ

雨垂れを 集めて咲きし 紫陽花の 濃き藍色を 君に見せばや

愛されて 綺麗になりし あの人は 私をすてて 正しかりけむ

目がさめて 隣に見えぬ 君のこと 胸さわがせて 探しつるよ

恋すれば 鐘が鳴るなり 愛すれば 金が要るなり 湧けとごとくに

天の川 歩いて渡る アルタイル 危ふがりて 祈るベガかな

家族より 恋人よりも 仕事場に 束縛される 時の長さよ

最後まで 戦ひし人 倒れても 助ける制度 既になくなむ

帰る家 選べぬ児らに 少しでも 心ゆるして 休める場所を



うたたねに 見しは昔の はらからの とり返されぬ あはひなりけり

梨の花 よき実をつけよ みやびとに もてはやされぬ 幸ひのうち

とりたてて 話もなきが 共にいて 安らかなるは 嬉しかりけり

手折りては 萎れゆきなむ この花は 君が手をとり 二人で見ばや

若人の 恋こがれあひ 子が生まれ 育ついとなみ 懐かしうなむ

父が背を 超えんとすらむ このかみは いづこの淵に さまよひおはす

恋のうそ 愛のまことと きこゆるは 天上人の 仰せなるらむ

恋の罪 愛で償ふ 夜明けには 去りつる国の 門開かれむ

死してなほ 幸せなれと 願ふらむ 人の心に 神はおはせむ



平安とは 誰か名付けむ 飾りたて 身をば削りて 争ひしものを

女など みんな同じと 言ふ君に 香をば隠して かき抱かれん

同じ名を 賜りながら これほどに 生き様かたちの 違ふものかは

真実に 最も早く 近づきて 証し人ぞ 罪に問はるる

確認が いるかどうかの 確認を せねばならぬ 仕事なりけり

道化師は こけつまろびつ 笑はせむ 赤き涙の 雫を描きて

安らかで 慈愛にみちた 退屈に 耐へられずなむ イヴの過つ

育てるも 育てられるも 一度きり 楽しい時を 過せますよう

降り積る 雪に濁りの 洗はれて あがなう町は 神のもちもの

神の子の 片端だにも まねびけむ 眠れぬ夜の 羊飼ひして



貴なれど あてなき夜を 生き抜けば 空寝空泣き 空言を使ふ

何事も くまなく知れば つまらなく 枯木の山も 秘すれば花よ

世の中は 椅子取りゲーム よき仕事 よき連れあいに 空きはでなくて

人がみな 罪人ならば この世こそ 花の咲きたる 牢獄ならめ

永久といふ 輪廻の鎖 断ち切って 限りあるものに 人は憧る

人の子に 宿さるるには あまりにも 純粋すぎた 青きたましひ

賜った 愛に教わる 恐れかな 老いた女の 捨てらるること

手も声も ぶるぶるぶるぶると震えた 何を恐れていたか判った

結ばれる 暇とお金は ありますか 働く人の 婚期剥奪

すべたまふ 怖きお方の 手のひらで もてあそばれる 雪になれたら

赤ちゃんが 養育者から 愛されて 獲得するは 希望だといふ



照りつける 炎天謳歌 せみの声 七年ぶりの 娑婆に出るかな

変らない 笑顔を求む 切実の 要請をうけ 二次元の嫁

子を残し 家を存続 させむには 悲しきことも さぞ多からむ

己より 賢き者の おらぬげに 振舞ふ猫の ひっくり返る

失くすもの 少なき人ぞ 待ち望む 世界がリセット される瞬間

かみついて 貪るように 求めあい 愛されていた 証をさがす

囲われし 小さき姫の 尋ぬらむ 歌で世界は 救えるものか

醜しと 赤鼻笑ふ 貴公子の 清き笑みこそ 残酷ならめ

きぬぎぬの 歌はいらねど ここにいて 三千世界の 烏を殺し

奴隷とは 死をも自由に できぬもの 貧富貴賎を 言ふに非ず

こりずまに 誰も入れぬ 想像の 王国つくれ 指先ひとつで

気がつけば 浮世といふ名の 妻がいて 死ぬまで俺と 別れてくれぬ

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