うたのある生活

村上4

これ以上死ぬのを見たくない気がして 安く可愛い造花を飾る

この星が赤ちゃんだった頃のこと覚えてるから海が好きなんだ

この海で朝は浜辺のゴミひろい夜は二人で星を見るんだ

君のない悲しみはとても苦いので毎日アイスを食べてよしとす

ぷかぷかとどこへ行っても浮いている私は宇宙にこぼれたジュース

思いきりアホできたのが懐かしい私のダンスでまた笑ってよ

愛さない愛します愛す愛すとき愛せば愛せ君を愛そう

別れたのは出会った証拠 死んだのは命をかけて生きてた証拠

美しい色とかたちの組み合わせ国旗みたいな夏服の君



ポーンからクイーンになり君のこと縦横無尽に守ってみたい

ぼくは今日花火になって君のこと笑顔にしたら消えてしまおう

舞い込んだ小鳥を皆で逃がそうと一丸となる二限の数学

乱暴で孤立していたじいちゃんを甘えん坊にした認知症

逃げるのと休むのがとても大切ねにんげんだって動物だもの

手入れなどほとんどしない荒れ庭で蝶々たちは恋をしていた

昨日までこれでうまくいったのに・・・この世と子どもは諸行無常

君と手をつないで走ったあの頃が自分史上でいちばん好きだ

村じゅうが田畑を売り払ったのでばあちゃんちはニュータウンになった

世間では無名だけれど業界で愛用される何かになりたい



二つあるものの一つがなくなると気になるようになってしまった

ぼくの背で眠る彼女はあたたかくずっとこうしていようと思った

君とぼく相性ピッタリだったのでそこは信じる四柱推命

適切なキョリをおければたいていの事故はおきないみたいね人も

割れにくいプラスチックの皿がすき自分も人も傷つけないよ

そのままで大丈夫って言われると無性に何かはじめたくなる

預けると寂しがるからなんて嘘さびしいのは私のほうだった

死に向かう旅の途中に美しい景色とうまいものがあればいい

大人だって踊りたいし歌いたい走りまわって叫びたいのさ

わたしたちどこに住んでもいっしょだね君は風になっちゃったから



病棟にハッピーバースデーの文字今日も誰かが生まれています

手のひらにおさまるうすい箱の中たしかに僕ら生きていました

窓からの眺めで部屋を決めていた君にならって引っ越す二月

総回診みたいになっても大丈夫路上教習応援します

生きているうちから千の風になって心は春の野を駆けめぐる

書いたメモなくしたけれど書いたこと自体は覚えてるような人生

流行に乗ってないけど気にしないセンスはないが好みはあるの

ハッピーエンドに胸が締めつけられる疑い深くなってしまった

忙しい田舎の共働き家庭海も山もそこにあるだけ

熱血を一周まわってかっこよく感じる歳をとるのもいいね



ぼくたちも二次元世界の住人さ勇者が現れるのを待ってる

抱きしめてふれあうだけで満たされたむかしむかしの愛をさがして

アドラーのいってることはわかるけど殴ってくる奴とは闘うよ

私をイジメてた子と和解する夢をみた三十六の朝

仕事なら金になるけど学校は休んでいきなつらいだけなら

架空でも素敵な家族は描けなくてかぞくみたいな他人を描く

母親のいうことなんてききませんそういうところたまらなく好き

生まれてはじめて自分を売りにいき売れ残っちゃう就職活動

キャラたちの名前からいつも考える彼らは話し動きはじめる

親しげな会話をきいていたかった読むのも書くのもそれだけのため



つらかったねと言ってくれるひとにすべてゆだねてしまいたい午後

あなたはいつも私を受け入れて笑顔をくれた恩人でした

思春期も親に反抗しなかった親は全然家にいなかった

吸わない人への配慮を忘れずにたばこを吸う人が好きなのです

この星に雨が降ってもむこうでは大丈夫だよ二人は会える

颯爽と私を抜いたアウディが警察に呼び止められて夏

カッとなり我を忘れて怒鳴ったら一番嫌いな人に似ていた

こんなことで怒らなくてもそのうちに きちんとできるようになるのに

君のことギュッと抱きしめ「ありがとう」いつか「さよなら」言えますように

星型のアクリルビーズ陽に透かし君はさけんだ 「きらきら してる!」



セミたちも暑すぎるのか明け方に激しく鳴いてしばし寝ている

少年に一輪の花手渡され君はしおれるまで握ってた

おいとくとたまに誰かが見てくれる今朝とれたうたセルフサービス

子育てを手伝えぬまま祖父になる父の助言の使えないこと

0と1で進む世界が0を1に変えたと思うここが好きだよ

夏の夜ファミマでスイカバーを買い君と乾杯して食べている

ランドセルという鎧を脱いでちいさな戦士たちは羽をのばした

気持ち悪がられない程度に伝えたい「すごく感動しました」って

こどもらは瞬時にウソを見抜いたが親を気づかいだまされたフリ



走れ!その夢がかなうまで走れ!その足が棒になるまで走れ!

若者を引き留めたいのか地方紙は地元のいいとこばかり報せる

世界はやがておれのもの!バイキンマンはこの世界を愛していた

ワタシヲスクッテクダサイメロンソーダ海上カラSOSアリ

ゆるふわの彼女が選ぶ鬼モード笑顔ではしゃぐ太鼓の達人

「帰りたくない」と泣く泣く手をふった夏の思い出来年もおいで

宿題をやらずに平気な顔してる教え子はすこし大人になって

折り紙の裏に秘密のメッセージ君の鶴だけ見舞じゃなかった

ラピュタ王ムスカ大佐の気分です走る子を追う大またの僕

雑草を抜いてひげ根を見てみたら毛細血管私と同じ



最近はどこへ行っても砂あそび母は砂フェチになりつつある

ハロウィンの準備を始めている売り場今年も三分の二が終った

秋物を着てるマネキン「夏という男とはもう終ったの」って

大雨でピッカピッカに洗車され次の日晴れたおでかけしよう!

君といるとあっという間に一週間一か月一年たつのです

2回目の命日がきて思うことあの年はもっと暑かったね

くつ下を可愛いものに変えてみる無難な人生を変える一歩

最初から満ちても欠けてもいなかった永遠にすれ違っていただけ

代わりなどいくらでもいるからこそ私を選んでくれてありがとう

その羽で気の向くままに飛べばいい海を渡る蝶もあるのだから



消そうと思ったつぶやきに「いいね」がついて消せないそれもまた愛

好きだったオモチャもじきに飽きていく残酷なほど後腐れなく

たったひとりの理解者がいてくれるだけで世界は変わって見えた

ズルいなあ優しかった思い出だけがとわに残るよ歳もとらずに

永遠の愛じゃなくても一晩の安らぎをただ重ねられたら

充電がすぐに切れちゃうこの体何で消耗してるのかしら

お互いに伴侶の話などをして恋でないこと確かめている

一回りするからわかりにくいけど昨日も今日も二度とは来ない

白黒をつけずに一度受け流す「そうなんだ」ってうなずきながら

つよい腕に抱きしめられて安心して眠りたいいくつになっても



私には始まりだけどあなたには終りなんだね昨日のことは

うちの子に数限りなく許されて私は親をやっていられる

恋愛とよぶにはもったいないような距離と空気感の二人が好き

丁寧な言葉遣いのAIにツッコまれつつ歳をとりたい

恋愛も周回遅れの僕のことそんなやさしく応援しないで

体重が急に増えたら黄信号急に減ったら赤信号です

文壇に「これは小説ではない」と言われた人の小説が好き

「兄さんのすすめる方ならもらいませう」旧家の庭に咲く冬の花

肉体の牢に囚われた魂をたまには解き放ってみたくなる

週4の正社員ってないかなあ給与も5分の4でいいので…



晴れた日に何の予定も入れないで日向ぼっこから始める贅沢

おひさまみたいなあなたの温もりが私の心を溶かしました

失敗をカウントするのやめましたごめんなさいして次にいきます

「死にたい」と言ってるうちはまだマシで「今までありがとう」が危ないと

遺体にもキスをしていた心臓が止まったくらいじゃ愛は消えない

この星ではちりあくたすら輝いて空からそっと降ってくるのね

クリスマス働くすべての人たちがソリに乗らないサンタなのです

山盛りのお菓子で祝うクリスマスケーキ代わりにお寿司を買って

君と見た景色、君とすごした時間、すべて忘れない ありがとう

「あおむしがちょうちょになっちゃった」と言って君はえんえん泣いていました



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